数字はウソをつかないとは言うものの…



ことの発端は日本の会社の社用車の件だった。
カーセンサーで目を付けて友人のクルマ屋(もう三十年来の付き合い)に依頼を掛けていたMAZDAのMPV。
もう廃盤になっているモデルだが、パッケージングの秀逸さ、そしてリアサスがマルチリンクと言う設計に加えて評判の良いSKY ACTIVEの2.3L N/Aエンジン。
どう考えてもホンダのオデッセィより優れている。
クルマ屋の古い友人は私の希望のメンテやボディのクリーニング、下回りの施工などを見積もってくれた。
ところが返ってきた返事は
「ここまでやるんなら新車を買っちゃえば?それかリースの方が良いと思うよ?」

しかし自分が一番気にいているのは実は帳簿への記載。

初年度登録から四年を経過しているクルマは一年(〜二年)で全額償却できる。帳簿を絶対に赤にしたくない自分としてはここは見落とせない。

自分の日本の会社は11月が新年度で10月が決算月になっている。しかし諸々の準備の遅れでいま、昨年の10月「まだ早い」と言ってるのに押し込んできた売上が十数万円だけ立っているだけで、他は立っていない。
最近になって9月に予定していたマカオの政府案件の売上は11月に入金と決まったばかり。
そうなると今期(初年度)から赤が確実になってしまう。

これはマズイと思っていたところ、最初の売上げを入れてきたところが、文句を言ってきたのでこれ幸いと組み直しを提案し、最初からその仕事が無かった事にする事を提案した。しかし担当者は「そんなの出来ない」を言い張るので、会社に電話してその旨を伝え「最初から無かった事」にする様に提案した。

そして10末のある展示会の支払い。これも展示会の主催者に電話して説明し、1日だけ支払いを遅らせて頂き、11/1請求・同日支払いをお願いし、了承を頂いた。

こうすれば今期は「まだ事業を行っていなかった」としてリセットできる。

もう一点の問題は、この会社の〝11月が新年度で10月が決算月〟である事。平成10年の設立時にどうしてそうしたのかは当時のスタッフがいないので謎のままだがマカオに合わせ、つまり1月から12月迄にしないと、どうしても合わない。ここを合わせないと先が面倒なので、色々考えた末、決算期を変える事にした。

その為には11-12月で一回決算し、改めて2025年より1-12月でスタートをし直す事。
マカオ政府の入金がそれ相応に大きいので、この過渡期の11-12月を全ての初年度に設定し、その入金に対して展示会の支払いとオフィスの入居の支払いとすれば全部が綺麗に収まり、初年度から完全に黒で収まる。



日本にいた頃はそれが当たり前過ぎて気が付かなかったが、いざ外に出て久しぶりに日本に戻ると、日本の会社の経営のキモはもうズバリ帳簿と納税と言うことがこの歳になってようやく理解できた。いや、分かっている方はとっくに分かっているし、上場企業や非上場でもちゃんとした会社の経営陣は分かっている。しかし我々の様な零細企業はなかなかそれに気が付かない。

むしろ通常の営業をやって、その流れをタダ帳簿につけると言う感覚では無いだろうか?

しかし事実は逆である事が、繰り返すが本当にこの歳になってようやく理解できた。どうやって帳簿を綺麗に仕上げるか?それは誤魔化すとか、都合良く書き換えると言う意味では無い。

通常は売り上げを上げる努力をする。
そしてコストは適正なコストに抑える。
同時に会社としてある程度の儲けが出たらあれ買ってこれ買ってになる。
オーナー企業だと少し儲かるとクルマだ、家賃が高い〝良い家〟に引っ越したりと、会社と経営者の個人の区別が付かない生活を始める。
そして
「払う事に四苦八苦」
する経営が始まる。

ここからは、このBlogにも初めて書く事実だが、ことの発端を最初から書く。

あまりこう言う会社の財務面に興味の無かった自分が、この帳簿に興味を持ったのは、実は竹村也哉/プラチナエッグの問題からだった。
あまりにひどい決算の為に、会計士か税理士(と、思っていた人物)に決算書の分析を頼んだ。しかしその途中で依頼を辞めた。
その人物が無資格である事に気がついた。
その人物にその事を伝えて中止を告げると「決算書を読んだから150万円払え」と言ってきた。
当然、警察行き案件。

そこで仕方なく自分で決算書の勉強をした。
時はコロナでロックダウン中であり、まぁ都合良いと言えば都合の良い時期ではあった。

帳簿が読める様になると見える景色が一変した。

問題のプラチナエッグとK2SHの契約時。既に同社は自己資本比率はマイナスだった。別にこの事実を出さなくても良いと思っていたが、最近、二審でまたグダグダ言い始めたので、同社の自己資本比率のデータを提出する事になった。

当然ながら
「テメーの主張が事実なら、直近三年の決算書と納税証明書。社保庁の納付書に雇用の台帳も付けて出せ!」
を付け加えて裁判所に提出した。
これらの情報はその位「動かぬ証拠」となる。

もう一点、この問題に興味がいったのは、自分に課せられる税金の高さからだった。
日本の会社で自分に課せられる所得税は20%。
加えて社保もかなり高い。
最初それを知った時、かなりビビった。
しかも居住地が日本では無いので、確定申告が効かない(つまりどうやっても戻ってこない)。
最初の段階で税務署から
「確定申告はご自身の居留地でやってください」
と言われた。

計算した結果、割に合わない事が分かり、役員報酬を予定した金額から大幅(半分)に下げた。
当初は役員報酬360万円(月払いで額面30万円)。日本にいる10日前後では良い小遣いだろう、くらいに考えていた(いま思えば、そもそもそこが舐めてるよね)。それを結局180万円(月払いで15万円、つまり半額)まで落とした。

しかもこれに社保庁の保険料(自己負担分)3万円を払うと手取り9万円(涙)。逆に日本での住民票は置いていないので、市区町村税は掛からない。とは言え手取り9万円。さすがに号泣を超えて笑った。

これでは日本でのアパートも借りれない!となり、日本での宿泊費として10万円。そして接待交際費として10万円をそれぞれ月額の上限として、会社の経費として設定した。
もちろんそれでは高いホテル代を支払うのは厳しいので、偶然売りに出ていたリゾート会員権を手に入れた。
年に一回、固定資産税と管理費を60万円ほど払うが、月額にしてみたら5万円くらい。これは経費に計上できる。
そして宿泊費は一泊5,000円以下。
節約出来るし、物件は東京近郊のリゾート地だから電車でも行けて東京に通える。それでも実勢価格で自分の購入分は400万円分の資産価値があるらしく、とて得な買い物をしたと思っている。

さて話しをクルマに戻すが、昨夜、帳簿のシミュレーションで簡単に計算してみた。
  • 新車を買った場合
  • 中古車を買った場合
  • リース契約をした場合
三通りでやってみた。

クルマは日産NV200のワゴンを想定。
社用車として定評があるが、さすがにバンはキツイのでワゴンを想定。


カーリースの会社のリンクを送ってもらい、色々見てみたが、これは本当に間違えやすいと思った。

何を間違え易いか?と言うと、毎月払う金額。
これが落とし穴だった。もちろん買った方が毎月の支払いは安い。
リースの場合の登録費用・車検やメンテ費用を加算すると少し雲行きが怪しくなる。
さらにリースで
「付けた方が良いオプション」
「付けてはいけないオプション」
を教えてくれた。

例えばフロアマットをオプションで付けるのは愚の骨頂だと。
「そう言うのは別に買って使うんですよ」
との事。

また期間を長くして7年にすべきだ、と。
そうすると走行距離制限が外れて、リースアップの場合、追い金無しで車輌を引き取れるとの事。「七年だと三回目の車検を取ってあと一年あるので、商用車だったら何十万円かにはなりますよ」
との事。

クルマ屋の友人は昨年、定年したが会社から言われてそのまま残っていると言う。彼の会社の社長はあの日本最大のオークション会社USSの創業メンバーの一人で、今でもUSSの役員に名を連ねている。

要は「リースアップしたらウチに流しちゃえばいいよ。少しは小遣いになるから。」と言う発想である。

そうやって帳簿をベースに考えると、決して目の前の〝支払い額〟に惑わされてはいけない事がよく分かる。むしろ購入したものが帳簿上のどこに載るのか?を考えるのが最優先だと思う。

そう言う視点から見ると、七年で450万円近い、一見高い金額を払うリースだが、登録費用や車検・自賠責やメンテナンスまで入っている事を考えると、トータルではほぼ買うのと変わらない。

とにかく問題は帳簿上の問題であり、既に来年春先までの売り上げと入金がほぼ確定している為、どうやって綺麗に着地(記帳)するか?だけに集中すれば良い。

そう言う観点から、裁判の書類を改めて見てみる。

「数字は嘘をつかない」とは言うものの、さすがに自己資本率をマイナス、それもマイナスの100%以上と言うのはこれはいくら何でもデタラメすぎる。よくこれで裁判所の証言で「ウチは儲かっていて順調です」と言ったもんだと感心する。

そう言えば公判の中で竹村がおかしな証言をしていたのが気になった。
「借金なんて商売をやっていればみんなある」
「借金かどうか、それはケースバイケースだ」
など、裁判長がいくら金額を聞いても具体的な数字を出せなかった(出さなかった)。
裁判長から「100か1,000か、そのくらいは分かるでしょ?」と厳しく言われても一切答えられなかった。

「答えたくないのかな?」「隠しているのかな?」等と穿ってみていたが、この流れを考えると、おそらく〝把握していなかった〟のではないか?と思われる。
そう考えた方が納得が行く。
自分なら自分の会社の直近5-10年くらいの数字は覚えてる。まして自己資本比率がどう推移しているか?は会社の信用数値と考えれば、そのくらいは理解していて当然だ。
これらを全く答えられなかったと言う事は、全く見ていなかったと言う見方はおそらく合っている。で、なければ負債総額が12億とかならないよ、あの規模で。

「数字は嘘をつかない」と言う原理原則を身に付けていれば、それはこうも言えるだろう。
「数字は全てを教えてくれる」

カーリースの件から始まったが、目の前の5万円の支払いと10万円の支払い。どっちを選ぶか?と問われ、背景を考えないで、安い方を選択する。それによって雪だるまになっている人って結構多いんじゃないか?と思う。

しかしこと事業に於いては、その支払い対象の元の属性がどこにあるのか?と言うのをキチンと判断しないとならない。
そう言えば華々しく喧伝しているスタートアップ界隈も、その成功率は僅か10-40%と言うし、そこから上場へと上り詰めるのは0.1%以下と言うデータが出ている。

むしろ自分の行きつけの日本の理容店だが、地道に仲間内で始めて最近4店舗目をオープンしたとメールが来ていた。彼のところも顧客管理をしっかりやり、「いつも帳簿と睨めっこですよ!」と笑っていた。

もう一度記しておく。

「数字は嘘をつかない」

と、同時に

「数字は全てを教えてくれる」


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