昭和回顧録不動産地上げ絵巻 夢洲の対岸は誰のもの?

今週マカオではG2Eが開催されていた。これはカジノ業者の展示会というよりは、カジノ業界全体のサミットに近い。ここでは様々な事業者が出てきては情報交換をする。またここで事業者同士の人的交流の場となっているのは事実で、むしろ目的としてはそこが大きかったりする。

2029年に大阪夢洲IRが開業するのであれば、あとわずか6年。実質完成はまであと5年となれば、人的交流を表看板にしてのヘッドハンティングも含め、戦略的にブースを出してアピールする。集客をするに海外の大手旅行会社を捕まえるのが、一つの手っ取り早い方法だからだ。

しかし今回のG2Eでの大阪の出展は無し。本来ならどれだけ小さなブースでも出展すべきで、「私たちは2029年よりIR事業をやります」と言う姿勢を見せ、マネジメントクラスのヘッドハンティングを含めた興味を喚起させる事は非常に重要だ。

こう言うと「(マネジメントは)MGMから来るんじゃないの?」という向きもあるだろうが、どの企業も「遊んでいる人は雇っていない」のが現実。遊んでいるような人材を来させられたら、それこそ大問題だ。

このG2Eで頻繁に聞かれた言葉がある。「Japan(大阪)は何も決まっていない」と言う話しである。

流石にこの言葉を黙って聞き逃す事はできない。なぜかと言えば大阪では既に巨額なカネが決済され〝コトは動いている〟(はず)なのだから。

いまアジア圏のカジノで一番勢いがあるのはフィリピンである。そのフィリピンの関係者が公式な記者会見の場に於いて日本やタイの話しを振られて行く中で、こう答えたのである。

要約すると「日本は何かを語るタイミングに無いし、タイはまだ何も無い」
     

どの業界でもそうだが、業界内の話しは早い。それが同業他社であろうと記事になる10日は早いと言える。従ってこの言葉がG2E開催期間中にあちこちから聞こえたと言う事は、これはカジノ業界内で「公然の秘密」として出てきた、と言っても差し支えないだろう。

前々から夢洲のIRはおかしいと感じていた。とにかく最初の入札の要綱からしてMGMだけに特別な条件を提示しており、他のSandsやWynnには異なる条件を出していたのは、Sandsの元役員の証言からも事実である。


またこの地に移住して10数年が経ち、本業のスポンサーの関係からも様々な情報が駆け抜けていく環境の中で、この期間だけでも多くのIRの開業を見届けてきたし、また多くのIRの廃業も見てきた。

前に日本で有名なVシネ俳優を表に立ててマカオのカジノを買収する、と言う話しがニュースになっていたのを見たことがある。その時の我々の反応は「腹を抱えて笑った」と言うモノだった。もちろんその後、その話しは頓挫したらしいが、頓挫どころか「良く話しが立ち上がったモンだ!」と言うレベルだった。

そもそもその買収対象となっていたカジノがあるホテルは、カジノホテルでは無い。ホテル部分だけが買収対象であって、カジノ部分は我々のチームのスポンサーである会社がやっているカジノである。表向きはカジノホテルに見えるだろうが、中は完全に別の会社だ。いわゆる軒を貸している、と言った方が分かりやすいか。

そんな話しなら数年に一回は出てくる。「どこそこのホテル、売りに出るらしいよ?誰か買う人いない?」
この十数年で何度声を掛けられたか。

そうした環境の中で「IRをやる為のステップが完全におかしい」と見ていたのが大阪IRだ。もちろんMGMの初期段階の大阪の事業者への説明の時、我々も業務で参加したので、その流れや薄いリアクションは今でも印象に残っている。

「特に積極的にやろうとしていない。ただ市が号令を掛けているから付き合っている。」よくも悪くもそんな感じだった。

明らかに纏めて押さえなければならないポイントは触らずに、どうでも良い景気の良い話しばかり大声で飛ばしていた。

ここで改めて自分のスタンスを明確にするのであれば、自分はカジノは反対では無い。しかしあの場所でやるのはあまりにも無謀で無駄で、最終的には出来ない、と見てる。

なぜ出来ないと見ているのか?それはなぜ万博への参加について海外の国が消極的なのか?を理解するばすぐに分かる。

さてそこで気になったのは2016年12月14日のこの記事である。


もし仮に?と言う言葉を最初につけるが、この夢洲にIRや万博を持ってくると言う前提で、周辺の土地を関連会社に買わせていたとしたらどうだろうか?

この夢洲に決めた人物にとっては、IRが出来ようがどうだろうが関係ない。昨日の情報の様にただひたすらゴールポストをずらし、土壌改良工事を続ければ良い。とにかく彼にとっては工事が続き「MGM来まっせ!」と鶴子に報告を入れ、組織票を貰えば事は足りる。「何を証拠に!」と言うのなら、あんたのスタッフのスマホを調べたら?(笑)と返す。


一方の当て馬を演じるMGMはどこかで見切りを付けなければならないだろう。あの大Sandsだって大阪の事務所を撤退した時に「大きな損失を出してしまった」とハッキリと、尚且つ目の前で言われた。
     

このニュースなどはG2Eで発表すべき事案である。MGMやオリックスには株主もいるのだから。ここでちょっと悪質なモノを感じるのはこの時系列である。

https://www.pref.osaka.lg.jp/hodo/index.php?site=fumin&pageId=48412


7月13日(木)に締結してなぜその日に発表しなかったのか?これはMGM側の希望ではないか?と類推する。なぜならG2Eは7月11日(火)-13日(木)まで開催。昨日は関係者の懇談会のみだった。この13日の発表であれば確実に会場の話題になり海外メディアに捕捉されただろう。

それが13日に締結して発表が翌14日金曜日の14時。これならネットニュースに載ってもその日の夕刊には大体の場合印刷されない。そしてG2Eのプレカンファンは終わっており、そのまま週末となる。我々は広報も本業なので、「良く練られていますね」と皮肉のイッパツも言いたくなる段取りだ。

あーいう土木屋には分からないと思うが、IRに出資している投資家は非常に煩い。「儲かった!フェラーリ買っちゃった!」なんてやっていたら、翌日には自分の席が無くなる世界だ。あーいう土木屋はそれを知らない。「ぎょうさんカネ持ってるさかい、ええやないか!」が通用しないのがあの世界だ。これだけ当て馬をさせて最終的に「何もありませんでした」はタダでは済まない結果が待っているところまで想像できないんだろうな、と思う。

一方で気になるのは夢洲周辺の地価の推移である。もし自分が儲けようとするのなら、場所を決め、それを発表する前に目一杯周辺の土地を買い上げる。その昔、これから鉄道や高速道路が通る発表前の野っ原や河川敷を買い取ったのと同じ手法をやる。それが一番儲かるからね。

IR反対派の方々はその辺り、どの会社がいつ、いくらで買ったのか?その会社と維新とのつながりは?と調べてみては如何でしょうか?


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