前回までの解説は下記の通り。
今回のカジノライセンスの更新、と言うよりは完全に新規取得(入札)と言って差し支え無い。そのポイントは下記の八点となる。
法案的主要內容包括:
1.經營娛樂場幸運博彩活動,須在維護國家及澳門安全的前提下進行;
2.賭牌數量最多六個,明文禁止轉批給,期限不多於10年及在例外情況下可延長最多3年,並規範經營規模;
3.強化博企及參與博彩業活動人士及公司的資格審查和監管機制;
4.調升承批公司資本額至50億澳門元;
5.提升由澳門永久居民出任常務董事的佔股比例至15%,限制承批公司或所屬控股公司上市流通股比例;
6.博企須履行多項義務及設立相應處罰制度;
7.博企須承擔社會責任;
8.賭場須設於博企擁有的不動產內,即現存衞星賭場的問題,須於3年過渡期內處理。
- IRに於けるカジノゲーミングアクティビティの経営は国家とマカオの安全を守る前提で行う事。
- カジノライセンスの数は最大で6。サブライセンスの禁止を明文化する。ライセンスの期間は10年を超えない事。例外的な状況の場合、最大3年の延長をする事が可能。それらは全て定められたルールの中で運営する事。
- カジノ経営企業とカジノアクティビティに関与する人や会社の資格に関する資格審査と監督スキームを強化する。
- ライセンスを取得した企業の資本金額を50億パタカまで引き上げる。
- マカオ永久居民が常任の取締役となるシェアの比率を15%まで引き上げる事。ライセンス取得企業、またはそこに属するホールディングカンパニーの市場での流動株の比率を制限する事。
- カジノライセンス取得企業は多くの義務を履行する事と、罰則の制度を設ける事。
- カジノライセンス取得企業は社会的責任を負う事。
- カジノは必ずそのライセンス取得企業の不動産内に設置する事。すなわち現存のサテライトカジノの問題は三年以内に解決する事。
さてここで『政府の管理が厳しくなる』或いは『政府の管理下に置かれる』と言う情報が出回っていますが、その点について実際は、この様にアナウンスしております。
澳門政府在諮詢文本時曾提及會派政府代表進駐博企內,但現在的法律草案並未有提及。張永春解釋,是經分析諮詢意見及參考其他地區後決定,但會加強對博企的監管,包括法律將訂明博企有重要決定或出現影響博企運作的情況時,須通知政府。*1
マカオ政府が経営に直接入ると言う考えを打ち出した事があったが、今回の草案にはそれは入れてはいない。マカオの行政法務長官 張 永春の説明によると、関係者の意見の他、地域の現状を参考にした結果、IR企業に対する管理を強化する事にした。その企業管理・監督は現状よりは厳しくします。重要なのはIR企業が重要な決定或いはその企業の運営に影響を与える様な状況になった場合、必ず政府に通知をする事。*1
と、しております。
また、
至於現時中介人貴賓廳已陸續退場,而是次公佈的法案內容也未有直接提及對中介人的監管及經營模式。張永春表示,為完善對現行博彩法中有關博彩中介和合作人規定修定,法案建議,將明文禁止博彩中介與承批公司以任何形式或協議分享賭場收入,及禁止承包賭場的專用區域,現在規範賭場幸運博彩中介業務有關內容上升為法律,將中介業務資格、准照監管、處罰等規範由法律訂定,以完善中介業務的法律制度。
今現在、ジャンケットのVIPホールは少しずつ閉鎖している。今回アナウンスした草案の中には直接ジャンケットの管理監督や経営などについては触れてはいない。しかし現行のジャンケットとパートナーの規定を改善する為、今回の法案はジャンケットとIR企業との間に存在したあらゆる形式の利益の分配を禁止する事を明文化する。カジノのエリアをジャンケットに貸して営業させたりする事もさせない。今までは慣例であった事を明文化しそれを法制化する。ジャンケットの業務資格・ライセンスの管理監督、処罰規定などを法制度化する。それによってジャンケット業務の法制度を改善していく。
テーブル数にも触れ、
在完成重新批給賭牌後,辜美玲表示,澳門政府希望博彩業健康發展,未來會按法律標準,對獲賭牌的博企賭枱數量作重新分配,而現時澳門營運中的賭枱共有6,198張。
今までの全テーブル数は6,198テーブルであった。新しいライセンスが発給された後、マカオ政府の希望としてマカオ経済財政長官室主任の辜 美玲はゲーミング産業の健全な発展をする事を望んでおり、今後は法律に基づいてテーブル数はリセットしていく。
と、している。
これらを読んでみての私の所感:
どうも奥歯にモノが挟まった感が拭えません。言葉にして〝言った〟と言う事は〝そう言う事例があった〟と言う事です。
確かに現在の正規ライセンス3にそれぞれ枝の3、合わせて6のライセンスに関して言うならば、それは2000年代初頭の法律の不備を突いたグレーゾーンを実現した、と言うのが正しい見方でしょう。従ってそこを法制化して、今更なのでその6に関しては認めましょう!そこは理解できます。
しかし今回、新たに入札をし直す事、事実上、サテライトとジャンケットを消す方向に走った原因は何なのか?と言う点について考えてみました。
この中で引っかかる文言はこの前記【*1】の部分です。
『なんか重要な事があったら政府に言ってくださいね!』なんて小学生みたいな事、わざわざ政府が言うかな?と考えた訳です。
そこで今回、6つのライセンスは出来レースとしても、今回、排除されたのは何だったのか?と言う視点に移して考えました。
そう。
ズバリ、ジャンケット(仲介人)です。
まず昨年11月26日。突然の太陽城のボス、アルビン・チャオの逮捕がありました。
読んで頂くと分かるが、この段階で私は〝おかしな動きだなぁ〟と感じていた。そして上記の『なんかあったらちゃんと言いなさいよ!』と言う小学校の先生の様な言い回し。
…なんかあったっけ?…と、考えた。
政府に言わずに重要な事を決めた…
尚且つジャンケット…。
なんと灯台下暗し。自分達がまさに、そこにいたじゃないか!と記憶が蘇った。
そう!
レジェンドGr.がジャンケットである德晉會のRevo Chan(陳 榮煉)へ譲渡した件。あの買収劇は当事者だけで進めた節がある。なぜなら当時、政府からの何らかのステートメントが一切出なかったので不思議だった。
仮説だが、この重要な出来事を政府に事前・事後の報告をせず決まった話だったとすると、今回の政府のステートメント、『重要な事は政府に言いなさい。』は〝この事を指すな〟と納得がいく。何よりマカオ人がこの言い方をする時はイラついている時だ。
レジェンドの元オーナーのDavid Chow(周 錦輝)は全人代のマカオの代表メンバーの一人だ。そしてマカオに〝ジャンケット〟を持ってきた人、その人である。
故スタンリー・ホーの下で働いていた当時、米国からこのシステムを持ち込み、スタンリーは言うなれば香港・マカオの地元で抗争を繰り広げるヤクザに仕事を与え、制度化させる事で闇社会を一応、表社会に変えた。
そこでこう考えると合点がいく。近年、力を持ち過ぎ、中には小さなIRを上回るパワーを付けてきたジャンケットに関し、マカオ政府はその将来を懸念していた。少なくとも現段階(コロナ発生寸前)では下手なサテライトよりも力を持つジャンケットが多く存在してきた事は事実である。
またジャンケットは映画祭やグランプリなど、各種イベントを通じて政府に喰い込んできていた事もまた事実である(政府がジャンケットを利用してきたと言う逆説もまた成立するが)。
周さんがレジェンドを売却した時、そこが政府の我慢の限界を超えた時ではないか?と仮定する。そしてスタンリーが鬼籍に入った今、ジャンケットを潰しても、ある意味メンツを潰される人は一線にはもういない。
そしてアルビン(太陽城)の逮捕。元々泳がせてはいたが、もし中国に身柄を押さえられたらマカオ政府に絶対に飛び火する。そこであの不可解なタイミングでのマカオ司法警察の逮捕へと踏み切った。
さらにサテライト問題である。ポイントはここにある。
6つのライセンスホルダーの会社のシェアホルダーと役員は欧米か香港、中国本土がほとんどで、マカオの地元の人はほぼいない。地元のマカオ民はむしろサテライトのオーナーである事がほとんどだ。
そのサテライト、カジノ部分は殆どがSJMかギャラクシーが大半を占める。そしてオーナーはマカオの地元民。
これらを統合して考えると、6つのライセンスホルダーはサテライトを吸収せざるを得ないし、役員会にマカオ人の比率を上げないとならない。八つの大綱の五番目はこの〝サテライトの吸収合併〟で全ての合点が行く。
一見、ハードランディングに見えるが、もの凄くソフトランディングだと言う事に気が付く。マカオ政庁にもアタマの良い人がいるのね、と感心する次第。
これを実行すれば、6つのライセンスの傘の下に全てがピタッと収まり、ともすれば隅っこに追いやられていた地元マカオ人の地位が復帰できる。四方丸く収める最大公約数は、この方法だな、と納得がいった。
大きく変わるが本質的には変わらない。非常に良いシステムだと思うが、ジャンケットに関わっていた人たちには残念な流れである事には変わらない。
それにしても小うるさい中央政府の指示を上手に交わして、それよりも一枚上手のシステムを作り上げるあたり、やっぱりここは京都だ、と思うね。そう言う意味では信用できねぇ。