カジノは日本経済の救世主か?



 この記事は2014年7月15日に中国専情報門サイトに寄稿したものです。
そのサイト自体が無くなった為、今一度IRについての基礎的な話しとして、この便所の落書きBlogに掲載します。時期、時間的に現在に合致しない部分もありますので、若干の加筆・修正を加えておきます。


 一般的に”カジノ法案”と呼ばれている【特定複合観光施設を整備するための法案】がどうなるのか? と言う事が非常に大きな注目を集めていると聞く。

 私の会社も今年に入ってからカジノ、なかんずくVIP倶楽部(いわゆるジャンケット)について大きく関わる様になってきた為、カジノ内部の様々な声が聞けるようになった。そんな中から日本に於いてのカジノがどの様な役割と地位を築くのか? 等を数回にわたり、ざっくばらんに考えていきたい。
そして何回かに分けて、このテーマを公開して行く事にする。

マカオに於けるカジノの役割

 マカオと言う地域に於いて、カジノはマカオ経済の非常に大きなけん引力になっている事は疑いの無い事実だ。年に四兆円もの収入を生み出し、元手は建物と人件費のみ。日本のパチンコの方が遥かに手間暇かかっている。しかしそれ故に法律で厳しく縛らないといくらでもグレーゾーンが発生してしまう。
そう言う事を嫌う政府が施行しているカジノに関する法律は非常に厳しい。
 またカジノに対する税金も38-42%(当時)と非常に大きく、早い話し他の税金と併せ、四兆円の売り上げに対して半分以上は政府の懐に入る。まさにカジノ様々である。

 しかしその一方でマカオ居民からの監視の目は厳しくそれをかわす為か、一般の個人・法人に対しての税金は極めて少ない。日本で言うところの中小零細企業の法人税はほぼ無税。ビジネス書やインターネット上の記事では6-12%等と書いてあるが、実際はこの三年ほどは完全にゼロである(現在も無税は継続中)。個人の所得税なども、ほぼ無いに等しい金額でそう言う意味ではマカオ市民は大きな恩恵を受けている。

マカオのカジノの収益を支えるVIP倶楽部(ジャンケット)

 マカオ政府はジャンケットと言う職業を確立させ、グレーゾーンに潜りがちだったそれらのエージェントを公的なものにした(しかし2021年、太陽城の摘発をキッカケに廃止方向へと舵を切った)。
このジャンケットが支えているカジノ収入は全体の45%以上を占める。
 VIP倶楽部はゲームに掛ける金額もそれなりに大きく、それぞれ3,000、5,000、10,000MOPとなっている。(換算するとそれぞれ、約38,000円、64,000円、128,000円) *当時のレート

VIP倶楽部を成立させる送金システムの確立が課題
(結局、地下銀行問題を解決できず、摘発の理由に繋がる)

 現在、中国から持ち出せる現金は一人あたり20,000元(約35万円/2014年の段階)。当然この金額ではホテルに泊まり、食事をし、ちょっと遊んだところでお金は終わってしまう。
 そこで各地域にあるVIP倶楽部オフィスが重要な役割を果たす。が、しかし見方によっては地下銀行以外の何物でもない。その昔、まだカジノの仕事に関わる前に不思議な景色を見た。マカオの隣、中国広東省は珠海市の国境近く。ほぼ新車と思えるベンツやBMW、Audi等の高級車がズラ~っと並んだ中古車屋を見つけた。どれもこれも新車の様だ。そのすぐ隣にはマカオのカジノホテルやジャンケットのオフィスが並ぶ。
 つまりこう言う事だ。クルマでマカオの隣、珠海に乗りつける。そこでクルマを担保に入れて数百万円を借り受ける。そのまま、ジャンケットのオフィスに入金され、あとは手ぶらでマカオへ入国。
 クルマを担保にしたカジノで遊ぶ資金はすでにカジノ側にセットされ、心行くまでカジノを満喫する。運が良ければ帰りは自分のクルマ+戦利品(キャッシュ)。運が無ければ徒歩か別のクルマを買って帰るのか…

 
 いずれにしてもこの様な客の売り上げが、例えば2014年1月から3月期のカジノ収入の63%(650億MOP/約8,300憶円)を占めている、、、これだけは紛れの無い事実です。税金だけでも40%(3,320億円)近いので、確かに日本国政府(特に維新のバカどもな!)が色めき立つのも分からなくもない。

 が、その税収の元の軍資金はどうやってその地に運び込まれるのか?と言う観点から考えると、かなりちぐはぐな話しになってしまうのは容易に想像できるではないか?と、思う。まさかカジノに来る高額な客を順番に外為法で逮捕する訳にもいくまい。
 また最近では持ち出し制限を掻い潜る為、銀聯カードを利用した現金引き出しが横行し、現在、それらのシステムを停止する方向で動いている(実際にそうなった)。

いずれにしても、
  1. カジノを作る
  2. 人が集まる
  3. お金を使って遊ぶ
  4. 収益があがる
  5. 税収が増える。
と言う流れに期待しているのは分かるし、誰であろうが期待する。

 が、しかし問題は②と③の狭間に存在する。まさか100万円を中国人に持って来させわずか15分でゲームを終わらせてすぐに帰国させる訳にもいくまい。しかし今の日本人が論議しているカジノ法案の先に出来るカジノ像はこう言うモノなのである。

そんなところに人が行くだろうか???
意外な事に、現段階での日本では例えカジノがあったとしても、その敵対するものは”外為法”なのだ。

果たしてそこが論議されているだろうか?

 従って私はこの日本で進んでいるカジノに向けての準備は結果的にいつもの”ハコモノ行政”と呼ばれているものに帰着する事は明らかだと思っている。
 問題は『何を作るか?』と言う事では無く、『どうやって持続的に回転させるのか?』と言う事がポイントだと考える。
(褒めてくれる?2014年の段階でSDGsを唱えている〝オレ〟)

 先日、五年ぶりに帰国した(もう二年以上、帰ってねーよ!)。
二年前にも一度戻ったが60時間程度で帰ってしまったので、帰国したうちに入れていない。久々の日本は清潔で静かで、しかし活気の無い、物価の極端に安い、それでありながらクオリティの高い、なんだか相反する事ばかりが存在する国だった。これだけ物価が安いとさぞ住みやすいだろうと考えたが、案外そうでは無いらしい。
 税金は高いわ、問題は山積みだわと人々は口にする。そこに建つビルや道路を見ると世界トップレベルのクオリティだと言う事は一目でわかる。この素晴らしきホスピタリティ(国のインフラをあえてそう呼ぶ)と、物価の安さ(何をしてもマカオの半額位の感覚)、しかし不満の多い生活のしづらさ。


“カネが回っていない”のだと感じた。
カネは出ているのである。
アジアの中での日本人の賃金は決して悪くない方だ。
が、回らないのである。

 回らないと言う事は、どこかに関所かダムか壁があるのだと感じる。一般的な日本人の給与所得に比べるとマカオのそれは月平均10万円ほど低いのではないか?と、思う。しかもこちらは物価高のマカオである。
 しかしマカオの場合、もらった給与はそのほとんど(ほぼ100%近く)が自分のお金である。対して友人の金融アドバイザーに聞くと、日本人の場合、一年間の所得は9ヶ月で計算しないとならないと言う。租税や社会保障費の支払い等である。
ここがダムか関所か壁になっているのではないか?と、思う。

計算してみよう
  • マカオ人の月給 女性/事務職/30歳 月給15,000MOP=約192,000円-15MOP/約192円(社会保障基金)×12ヶ月=約2,301,696円(年収)
  • 日本人の場合、単純計算だが月給の額面が25万円として諸々の租税/社会保障などを払って×9ヶ月として225万円となる。
 
 月額で5万以上多く貰っていて(つまり年間で60万円近く多く得ている)も、最後に清算するとほぼ同額になってしまっている。これはもしかしたら…と言う言い方になるが、精神的な負担を感じやすい状況にもつながっていて、それが社会の閉塞感、話しを飛躍すると、どう考えても怪しいセミナーや、ありえない投資話しに大勢の若者やお年寄りが吸い寄せられている遠因にもなっているのではないか?と言う気がしてならない。

 社会保障における予算の使用目的や状況はいまさら語るべくもないが、受けられる保証やサービスに大差ないとすると、これは一体なんなのか?と言う言葉も出てくるのも無理はない。
 公立病院での出産は無料。10歳までの子供の医療費は無料。重病などの場合はまた割合に応じて有料になる。正規システムの学校に行っている小中学生も同様である。これらの予算は当然ながら税収で賄っており、その大半はカジノから、と言う事であろう。そう考えると、たしかにマカオはカジノで市政が上手に機能している事が証明されている。

 しかし、では例えばこれをそのまま東京(大阪な!)に当て嵌めたらどうだろうか?
お台場(夢洲)にカジノが出来る。
都(府)民の所得·住民税に加え、そこにある中小零細企業の法人税が無料になる。
保険料もいらない。
しかし今までと同じサービスを受けられる。

あり得ますか?
私はあり得ないと思う。

 もしかしたら日本から見たら、この天国の様なマカオのシステムは、それが機能する適正なスケール(サイズ)があるのではないか?と仮説が立てられます。カジノがあり、それで生き続けられている国や地域。
マカオ、シンガポール、モナコ。。。
次回はその辺りを考察してみたいと思います。


以上が当時の記事です。
自画自賛になりますが、七年前なのに結構先見の明がありますよね?
これらの部分をどうするか?金融庁も交えて論議しましたか?
してませんよね?

 私はここで〝タダの箱モノ行政になる〟と予告しております。今、大阪の試算表やシンガポール、マカオのIRの資料をまとめておりますが、松井市長の言う数字には絶対になりません。
 大赤字でIRの撤退が見えております。ではなぜ進むのか?答えは2014年七の月に予言をしております、ホッホッホ!
 つまり松井市長は〝箱モノ行政〟だけに主軸を置き、建設時に出て来る様々な予算を業者に支出。後に寄付か献金させるのでは無いですか?そう考えると納得いくのです。と言うより、言っている事のチグハグさ。数字を並べた時に出て来る矛盾から、目的はこっちだろうな?と思う言動を本人がしている訳ですよ。

次回はシンガポール・マカオのSandsの決算書から、大阪IRのウソを暴きます。乞うご期待を!

ホーッホッホッホッホッ!(隼人ピーターソン風)