本澳商人周焯華被帶回警局調查 |
怪しい発表
「それはおかしな動きだなぁ」、と感じたのは今年のマカオGPのスポンサーが発表された時だった。
6つのレースに対して6つのカジノのスポンサー。
この〝6つ〟と言うのが発表時に酷く引っ掛かって「これって政府のカジノに対する合法的な恐喝だよな?」と話していた。
今、マカオのIRはライセンスの更新問題に揺れている。
その二年前、現状のライセンスの付与は実は〝法に反している〟と言う話しが急浮上した。
どう言う意味か?
現在、マカオの公式なライセンスは以下の三つ。
- SJM
- GALAXY
- WYNN
この三つしか正式なカジノライセンスは存在しない。
ここに〝枝〟と言われている分岐ライセンスが上記の1-3の下にニョキっと生えている。
- SJM - MGM
- GALAXY - Sands
- WYNN - Melco
これがマカオのカジノライセンスの構造だ。
二年ほど前からこの〝枝〟の合法性について政府が言及し始めた。最初はイチャモンと感じた関係者やマカオ市民も、調べてみると確かに政府の言い分は〝正当〟なものだと分かった。
次の問題は当時のトランプ政権時代から始まった米中の歪み合いだった。これによって米国系のカジノは追い出されるのではないか?と言う噂が自然と立った。それも当然。政府も実はそこを検討していた形跡がある。
それは政府がのちに『雇用も大事なので…』と言う言葉を発していた事からも、米国系を追い出す事を検討していた事を匂わせた。
マカオGPのスポンサーが発表された時、6つのカジノがそれぞれのレースのスポンサーについたのを見てマカオ市民は言った。
『露骨だよな』
『合法的な強請りだよ』
言い得て妙だった。
そのGPの開催中、これまた苦笑いしか浮かばない様なアナウンスがこっそりとされた。
『カジノライセンスの更新の件ですが、更新までに各種の手続きが間に合わない可能性があります。その場合、現状のままの形式で継続します。』
流石にこれにはマカオ市民も苦笑い。『よく言うよ…。』と。
また『枝を無くして6つの正規ライセンスで行く方向性である』と言う話しも伝わった。
話しはここである程度、落ち着いたのか?と思った。
寄り道
ちょっと本題からは逸れるが、前にウチのオフィスがあったホテル。新しいオーナーはジャンケット(仲介人)。本来のカジノとジャンケットの立場逆転でオーナーになったのだが、こちらも提案があり、ある話しを入れた。入れたのだが返事が全く無い。いつもならYes or Noくらいはさっさと言う人達なので、ちょっとおかしいな?と言う空気感は有った。
そこでたまたま用事があったので、元オフィスの有ったホテルへ行った。すると何ともモヤっとした気分に駆られた。
なに一つ動いていないのだ。
こんな事ってあるかな?と思った。今年の2月から改装を始め、新しいプロジェクトを始めると聞いていた。しかし4月頃に呼び出された時、何か口籠もった感じになっていた。最新のニュースは何も出ず、前オーナーの周さんとの間でプライベートジェットを要るの要らないので揉めている感じの報道が一件あるだけだった。
そして元オフィスの前を通ると愕然とした。そのまんま。
何一つ手を付けていない。とにかくロゴや看板がウチのまま。
しばし言葉を失った。そして背後に何か大きな問題が起こっているのでは無いか?と言う空気感になるには充分だった。
その前後してグランドラパの知己を得て、一緒にやって行きましょうと言う方向になったのでもう良いけど、それにしても何かあるな…?と言う空気感だけは拭えなかた。
激震走る!
11月26日の夜、速報のニュースが流れ激震が走った。
太陽城(サンシティグループ)総帥のアルビン・チャオに温州警察が逮捕状を発布したのだ。
溫州批准逮捕本澳商人周焯華
(温州の地元公安,アルビン・チャオの逮捕を認める)(圖文) 周焯華涉內地開設賭場被溫州批捕
(アルビン・チャオ、中国本土で開帳賭博容疑で逮捕) 実はこの伏線はあった。11月24日にWynnに入っていたジャンケットの負債をWynnに求める最高裁判決が出たばかりだった。正直、これには首を傾げたが、何か〝今までとは違う段階の動きがある〟事だけは間違いないと確信したばかりだった。
よく考えれば腑に落ちる
流石に今回の一連の流れはマカオの景気回復の行先を思うと氷水をぶっ掛けられるような話しだ。
が、しかし冷静に考えると、こうなるのは既定路線だったと捉える事もできる。
2019年サンシティ・マカオグランプリ |
それはそれは華やかだった。ジャンケットがこの数年、カジノを差し置いてマカオGPの冠になるなど『もうジャンケットはカジノを抜いたかな?』と思わせるに充分だった。
また元オフィスのレジェンドGr.を徳信会のオーナーであるレボが買った時、『あぁ、もうそう言う時代なんだな』とも感じた。
しかし今回の件でそれこそ地面に叩きつけられた様な、或いはバケツの氷水を真冬に頭から突然ぶっ掛けられた様な、まさに〝一夜にして天と地がひっくり返る〟事を目の前で見させられた。
元々、太陽城はマカオのマフィアが母体だった。それを整理整頓してのし上がったグループだ。その経緯については長くなるので今回は割愛するが、その成長過程で香港の上場会社を買取り、自らを上場会社にすると言う荒技で資金を確保し、事業拡大を計った。が、素性は隠せず、和歌山のIRの入札も失敗した。
そこで今度は北海道へと移動する。
これも上場の時と同じく、別の会社が購入した土地を所謂、名義変更で取得している。このパターンが得意だ。
先ほど速報が入り、自らマカオの司法警察へ出向き、自首と言う形をとった模様だが、まだ司法警察からのアナウンスはこの時点で何もない。
ただこの逮捕劇は額面通りには受け取れない部分がある。それは温州の公安局が『自首したら厳しくしないから』等、おかしな情報を発信している。似ているケースで数年前にオーストラリアのクラウンホテルの中国支店でもあった。それがきっかけでクラウンはMelcoとの合弁を解消し、オーストラリアへ帰ったが、後にキンぺーの従兄弟がクラウンへ行くMelcoのプライベートジェットで現金を運び、マネロンをしたとしてオーストラリア当局に捕まっている。
今回も中国国内の政争の具では無いか?と思えるフシもあるが、少なくともマカオ、否、世界No.1の規模にあるジャンケットを潰しに掛かった事から、恐らくマカオでのジャンケットの排除は加速するのでは無いか?と思われる。そう考えると今回の動きと、マカオ政府の打ち出している観光立国の方針は確かに一致する部分はある。
マカオのカジノは選挙運動をしない大阪自民党みたいなもの。一方のジャンケットは合法非合法問わない維新だ。時代の趨勢でこう言うのは排除されるのは当然かもしれないが、本来ならこれを受けて北海道の警察・公安は同社の日本法人の立入検査をすべきと進言させて頂く。
また一昨年まで太陽城を持ち上げまくっていたマカオ政府。去年はともかくとして、今年はグランプリのスポンサーにジャンケットは一切入れさせていなかった。あー、いま思えばそう言う事か、と。相変わらずイヤラシイなぁと。