春節前にある相談を受けた。それはマカオにある、とあるカジノホテルに出来る新しい施設のお話し。それ自体は知っていた。多分ニュースか何かで見たのでしょう。
しかし日本のある業者が発注を受けた段階でストップしていると。よくある話しといえばよくある話しだし、また中途半端なブローカーか仕事が出来ない人間が真ん中で噛んでいるのかも知れないし、ともかく話しを聞いた。
聞いた結果、『半分は本当だろうけど、半分は違うな~』と直感し、その相談主に、そのまま回答した。繋いでくれたのが25年来の友人であるし、かなり困っている様子なので『ともかく確認する』と言う約束。
この件は3つのキーワードが存在した。
ひとつはホテル名。
これは実在するし、実際にそこでは新しい事情計画が発表されている。しかし資本関係を考えると、相談主が話している相手の"筋(スジ)"が完全に違う。A国の企業経由ならビンゴだが、そうでは無いと言う。
これで3つのキーワードのうち、ひとつはビンゴ、ひとつはスカと言う結果。どうにもこうにもむず痒い…
問題はもうひとつのキーワード。
このホテルの重要な部門である会社名と一字違いの名前の人が、この相談主への依頼者だと言う。ここが引っ掛かった。どうにも気持ちの中で引っ掛かる。古い友人は別の日に電話をしてきて『あれは確かに一字違いだけど関係無いと思うけどな~』と言う。
けれど、引っ掛かる。引っ掛かって、引っ掛かってどうしようもない。どうにもこうにも引っ掛かるので、その会社の社長に電話を入れてアポを取った。
結果、
『その人はうちの投資家の一人です』
と言う回答。
見事にビンゴ!
そうなると一つ目のキーワードは正しかった事になる。そして二つ目のキーワード、これは自分の読みが正しく、その社長は『そもそも、そう言う話しはその投資家本人から聞いてはいない。あなたが言うとおり正しい情報ならA国経由になるはず。しかしその投資家が○○月に日本でMTGしていたと言う事を、その依頼主が知っていると言う事は正しい情報です。』
ここも合っている情報と違っている情報が混在していた。なにせこのA国企業。A国有数の大財閥である。あとでこの件が成立したら話しは公開するが、聞いたら誰もが『あー、あの会社なんだ』と言う企業。いい加減な事は出来ないし、やる筈も無い。
さて、三つ目のキーワード。
これも自分の読みを説明した。
この投資家さん、もしかすると全体を理解しないで大枠だけ知っている話しを説明し、それを聞いた相談主がかなりのフライングをしてしまった、僕はそう見ていた。この社長もかなりの部分で『多分、そうでしょうね』と笑っていた。
肝心なのはここから。
社長は『計画は確かにあります。しかしまだ詳細が煮詰まっていない。どうすべきか?いや、あなたはどうしたいのですか?』と聞いてきた。僕はこの件とは全く別のある案件が引っ掛かっていた。この件とは全く異なる案件である。しかし同業である。仮にSプロジェクトとする。
「今までお話した案件と今からお話しするSプロジェクトは全く別の案件です。しかし私の頭の中ではこ両社は結婚すべきなのです。なぜなら…」と説明を始め、しかし「問題は誰が金を出すか?です。ホテルの親会社は可能性があるかも知れない。そしてA国も可能性はある。しかしながら、今はそのタイミングとしてはちょっと早いと思うのです。」
すると社長は
『いや、確かにそうなんですが、Sプロジェクトは売る意思はあるのですか?』
「はい。現在4つの選択肢があり、そのうちのひとつには『売る』と言う事も含まれています。私は担当者から直接聞きましたし、数日前に電話でも確認しております。」
社長は身を乗り出し、
「私に売ってください。その件、纏めて頂けませんか?」
ビックリと言うか、なんと言うか、目の前がチカチカした(笑)まさかこう言うタイミングでそう言う事、言うか?と言うかありがたいお話と言うか・・・青天の霹靂。社長はなぜそう言う提案を言うのか説明してくれた。
なるほど、それならお互いにWIN=WINの関係が築ける。こっちもWINだし、ホテルもSプロジェクトもA国もWIN。今は困っている依頼主も全部、WIN。まさにカジノの"777"状態。
まさかこの目の前の方が『買いたい』等と、本当に想像も出来ない話し。
正直言うと頭の中はかなりテンパッてた(笑)
『Sプロジェクトは来月の半ば迄に結論を出したいと申しておりますが?』
「いいでしょう、早いほうが良いです」
『Sの謄本を持っていますので、スキャンして送ります』
「いや、それを見ながら直接会いましょう。もっと会って早く決めましょう」
と言う事で、こう言う展開となった。
事実上のM&Aだが、今回はキャストが素晴らしい。発表したら『おお!』となるキャストだ。
社長と別れ、すぐに日本へ電話。依頼主と友人に伝える。
『まず今から全ての話しをシャットアウトしてください。次に私とだけ話してください。委任状を下さい。』友人は驚いて「凄いタイミングだね~どうなっているの?」
モノには全てタイミングがある。例えが悪いが、太陽風の周期と今年の地震の関係。目には見えないが、自然のリズム、文章や方程式では表せないサイクルや法則がある。その法則に乗るのは簡単。正しいタイミングで正しい道を歩く事。そして正しい人間関係の中を歩く事。絶対に上から目線、なかんずく『助けてやる』等と言う思考回路にならない事。
続かないのはWIN=WINでは無く、一人勝ちをやってしまうから。特に仲間からルーザーを出したら最悪な事態になる。今、日本でも新しい仲間が良い意味で人生の岐路に立っているが『役に立てる事があったら(僕を)いつでも使ってください』と伝えた。
大切なのは『助けてあげる』のでは無く『役に立つこと』なのだ。結果が"loses"ならそれは『役には立っていない』そこで『助けてあげた』等と言ったら天に向かって唾を吐く様なものだ。そうなると最後はその唾が自分に降りかかる。
人・モノ・情報・金を最後に結ぶのは"時(タイミング)"こればかりは、人間の浅知恵では動かないようである。大先哲はこれを"諸天善神"と言ったのではないか?と、思う次第…
ついでにこの社長に今年から僕の会社で扱う、モータースポーツ関係のアパレルについて相談を持ちかけた。
『日本を除くアジアでの販売が出来るトップブランドである事と、もうひとつは有名なイタリアのレトロブランドである事。ある程度の仕入れは出来るが店を出す資金は無い。しかし希望としてはマカオのトップのカジノホテルのブランドストリートに店を出したい』と伝えた。
全く都合がイイと言うか、自分ってどこまでも図々しいなと思いつつも、実情をお話しした。
すると
社長は暫く考えて、
『何月からが希望ですか?』
と質問してきた。
「来月!」と言いたいのをググッと飲み込んで、新製品、2012年モデルが出る5月以降と答えた。
すると
「良かった。実は5月にあそこのホテルに大きな○○施設が出来るんですよ。なので、今のタイミングは無理ですが5月以降であれば話を纏めますよ」
モノは言ってみるものである。
モノゴト、全て"タイミングが重要"と言うお話しでした。